研究テーマ

超音速・極超音速流れ

ウェーブライダー形状に関する空力特性評価

 飛行機が音速を超えた速度で飛行すると衝撃波が発生し,その造波抵抗により著しく揚抗比が低下してしまいます.揚抗比の低下を抑えるために考案された機体形状が「ウェーブライダー形状」です.このウェーブライダー形状は、機体前縁から発生する衝撃波を利用して高い揚抗比を得る機体形状です.横から見ると衝撃波に乗っているように見えることから「ウェーブライダー」と呼ばれています.ウェーブライダー形状を利用することで,音速の4〜5倍以上で飛行する極超音速飛行時においても主翼に後退角を持つ通常の飛行機と比較して高い空力性能を発揮できると期待されています. この機体形状を極超音速機として,実機開発に向けた基礎研究を,JAXAと共同で行っており,数値シミュレーションと風洞試験の両方から空力特性を評価しています.風洞試験はISAS/JAXAの相模原キャンパスの超音速風洞を利用して行っています.極超音速での飛行が現実のものとなれば,東京-ニューヨーク間を4時間で移動が可能となります.また,このウェーブライダーは二段式宇宙輸送機(TSTO)の一段目として活躍することが期待されており,2030年に二段式宇宙輸送機の実現を目指して研究を行っています. (動画はマッハ数M=4.0 迎角α=0.0°で計算)



数値計算を用いた再使用観測ロケットの空力特性評価

 高頻度に大量の宇宙輸送の実現を考えた時に,現在の使い捨てロケットでは膨大なコストがかかり非現実的です.しかし現在の宇宙輸送コストの100分の1程度のコストダウンが可能となればそれが実現すると予測されています.この大幅なコストダウンを実現させるために考えられているのが,ロケットを再使用型にすることです.つまり再使用ロケットとは「大幅な宇宙輸送コストの低減そして高頻度繰り返し運用」を目指した将来型宇宙輸送システムです.JAXAでは現在, 再使用ロケットシステム構築技術の習得および高頻度繰り返し運用の実証をするために垂直離着陸型の再使用観測ロケットの開発が進んでいます. 再使用観測ロケットは,地上帰還時に滑空から転回飛行を経て最終的に垂直着陸に至るという特殊な飛行形態なため,エンジン1機の故障時にも安全に帰還できるように液水液酸ロケットエンジンを4機搭載しているロケットです.本研究は、JAXAと共同で,よりよい再使用観測ロケットの開発のためにスーパーコンピューターを用いて再使用観測ロケットの空力特性の解析を行っています.



液体ロケットの水素ジェットと気流の干渉構造に
関する数値解析

 液体ロケットの安全性や打ち上げ能力の更なる向上が求められています.そのためには,高精度な安全評価が不可欠となります.安全評価に大きな影響を与える現象の一つに液体ロケットタンクから噴出される水素と気流の干渉による着火・爆発の発生が考えられます.この流れ場では,超音速気流中に噴射するため衝撃波が発生し,境界層と干渉するため複雑な流れ場となります.そこで本研究室では,数値シミュレーションを用いて水素ジェットと気流の干渉による着火・爆発の可能性を調査しています.



高圧水素噴流の拡散過程の数値解析

 近年,燃料電池自動車などの輸送部門への導入にあたり,国内各地に水素ステーションの設置が進められています.水素ステーションでの水素の貯蔵方法は,高圧(82MPa)で圧縮した水素をタンクに貯蔵する方法です.このような高圧水素の貯蔵設備において,予期せぬ事態で水素が流出してしまった場合に,水素がどのように拡散するのかを知ることは大変重要です.そこで本研究室では,数値シミュレーションを用いて高圧水素噴流の拡散挙動を調査しています.